【読書感想文】『アポロ13』に学ぶITサービスマネジメント〜映画を観るだけでITILの実践方法がわかる!〜が面白い

はじめに

こんにちは、SHOJIです。

「『アポロ13』に学ぶITサービスマネジメント〜映画を観るだけでITILの実践方法がわかる!」が面白かったので、今回はこちらの書籍の紹介をしたいと思います。

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アポロ13』に学ぶITサービスマネジメントってどんな本?

ITサービスマネジメント(ITSM)の考え方を、映画「アポロ13」に照らして教えてくれる本です。基本的には映画を見た上で読む本ですが、映画を見てなくても理解できるような構成になっています。

なっていますが、面白い映画ですし2時間ちょっとで見られますから、映画→本の順序で見ることをオススメします。せっかくこういう本で勉強するなら、しっかり楽しんで勉強した方がいいと思うんですよね。映画の2時間すら惜しむくらいなら最初からITILのテキストを読んだ方が手っ取り早いわけですし。


そもそも、ITSMやITILって何なの?という方に向けて説明すると、ITSMはITサービスを安定的・継続的に提供するための管理手法のことで、ITILはITSMのベストプラクティスをまとめたものです。実際の開発の現場で言うところの運用や保守を上手く回すための考え方と思ってもらえればイメージしやすいでしょうか。

実際には設計・開発の段階からITSMを考慮してシステムを構築するので全工程に関係のあるものなのですが、最初のつかみとしては「運用・保守のための考え方」くらいに捉えてよいと思います。

目次と感想

■第1部 ITサービスマネジメントアポロ13

●第1章 ITサービスマネジメントとは -ITサービスの価値を高めるために-

●第2章 『アポロ13』でITSMを学ぶ意義 -アポロ計画とビジネスストラテジの共通点-

■第2部 サービスストラテジ

●第3章 「ニール・アームストロングが月に降り立ちました」 -アポロ計画における戦略-

●第4章 「14号があればだが」 -アポロ計画における「顧客」とは-

●第5章 「月を歩くんだね」 -サービスという単位を考える-

■第3部 サービスオペレーション

●第6章 「ヒューストン、 センターエンジンが停止した」 -インシデント管理-

●第7章 「反応バルブを閉じろ、と伝えろ」 -サービスデスク-

●第8章 「自分の字が読めないんだ。思ったより疲れているみたいだな」 -問題管理-

■第4部 サービスデザイン

●第9章 「絶対に死なせません」 -サービスレベル管理-

●第10章 「チャーリー・デュークが風疹にかかっている」 -可用性管理-

●第11章 「問題は電力だ。電力がすべて」 -キャパシティ管理-

●第12章 「トラブルが発生した」 -ITサービス継続性管理-

■第5部 サービストランジション

●第13章 「なんとかして、この四角をこの筒にはめ込むんだ」 -構成管理-

●第14章 「この飛行計画は忘れよう」 -変更管理-

●第15章 「こちらヒューストン。打ち上げ準備完了です」 -リリース管理-

■第6部 継続的サービス改善

●第16章 アポロ計画は改善のかたまり -継続的サービス改善-


ITSMの教科書としてもよくできていますが、それ以前に単純に読み物として面白かったです。 目次からして、映画の印象的なセリフにITILのプロセスを関連付けて興味を惹くようになっています。 僕はこの目次に目を通した時に「この本は当たりだな」と思いましたし、実際それは正しかったです。


第一章の導入で、ITサービスとは何か? なぜITサービスマネジメントが必要か? ITILがどう役に立つか? の説明があり、その後の章でITILをベースにITSMの考え方を解説していく形です。ITILはなかなかにボリュームがあって全ては網羅できないので、大切な部分をピックアップして解説されています。したがって、ITILの資格試験のために読むには適さない本です。これからITILを勉強する方が取っ掛かりにするか、逆にITSMやITILを知っている方がおさらいしたり理解を深めるのに適した本と言えます。


ちなみに、僕はどちらかというと前者で、実務で運用・保守を行った経験はあるものの、ITSMを体系的に学んではいない状態で読みました。そのため、実務で何の気なしにやっていたことがITILでしっかりと定義されていることに気づきまして、それがITILをきちんと勉強するキッカケになりました。

たとえば、第3章の問題管理とインシデント管理の違いについて、実務でも当然ここで定義されているような行動を取っていたのですが、具体的にプロセス名や定義を知ったのはこの本を読んででした。定義を知ることって大事で、漠然としていた物事の解像度が上がるというか、知識として捉えることができるようになるんですよね。人と話す時にも共通言語があると便利ですし、基本的な用語と定義は抑えておくべきだなと思いました。


他に読んでいて特に面白いと思ったところとして、第5章のサービスの3つの分類は良かったです。サービスを「コア・サービス」「実現サービス」「強化サービス」に分類するという考え方で、これまでこのような分類でサービスを考えたことはなかったので新鮮でした。

第6章〜第8章にかけてのインシデント管理や問題管理についての話は、ITに関わる人なら外さない内容だと思います。特に第8章の「火事が少ない地域の消防団の話」は、非常によくある話なので頷きながら(あるいは涙しながら)読めるはずです。

第9章のSLAの章では、多くの会社はSLAと言いつつただの契約書を作っているとの指摘があるのですが、これもIT企業あるあるとしてニヤリとできる話でした。

長くなるのでこのあたりで打ち止めにしますが、どの章もIT企業勤めなら身近に感じられて、かつ大切なテーマになっています。

最後に

もしかしたら、これは弊社だけの話で一般化できないかも知れませんが、管理職は開発が円滑に進まないことよりも、リリースしたサービスにトラブルが発生することを心配する傾向にあると感じます。

開発の方はテコ入れしてこっそりリカバリできる余地がありますが、運用中のトラブルはクレーム入って即問題化しますからね。なので、ITSMの知識があって心配の種である運用を円滑に薦められる人間は上司からの評価を得やすいです。それが理由というわけではないのですが、抑えていて損はない内容ですのでぜひ読んでみてください。